親の財産が多かったり、不動産を持っていたりすると、いずれ相続税が発生する可能性があります。
そんなとき、「生前贈与で対策したい」と考える人も多くいます。ただし、相談せずに進めると、贈与が認定されず逆に相続税の対象になってしまう場合も。
相談する前に、何を準備してどこに頼るべきか。この記事では、特に経営者や高齢者が知っておくべき、生前贈与相談の進め方をお伝えします。
生前贈与相談は誰もが必要なわけではない
生前贈与の相談は、すべての人に必要というわけではありません。
相続税そのものが発生しない可能性が高い場合、相談に費用をかけるメリットが薄れてしまいます。まずは、自分たちに相談が本当に必要かどうかを判断することが大切です。
相続税が発生する可能性を確認する
相続税には、基礎控除という非課税枠があります。
2025年現在、相続税の基礎控除は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。たとえば、相続人が2人の場合は4,200万円までの遺産であれば相続税がかかりません。
ただし、不動産を保有しており、その他に預貯金もある場合、合計が基礎控除を超える可能性があります。不動産は相続税の評価額で計算されるため、実際の時価と異なる場合も多いです。
また、敦賀市のような地域では、複数の不動産を持っている人が少なくありません。原子力発電所関連企業の従業員や、事業を営んでいる場合、資産が想定以上に増えていることもあります。
一度、持っている資産をすべて洗い出し、その合計額が基礎控除を超えるかどうかを確認しましょう。
相談に値する資産条件
財産の総額が基礎控除を超えそうな場合や、不動産と現金が混在している場合は、相談のメリットが大きくなります。
「どのくらい節税できるか知りたい」「子どもたちが平等に相続できるようにしたい」といった希望があれば、専門家に相談することで具体的な対策が見えてきます。
逆に、資産総額が基礎控除以下で、相続人が少ない場合は、自分たちで手続きできる可能性が高いです。
生前贈与の相談前に準備すべき情報
相談する際に、資料がきちんと揃っていると、より具体的なアドバイスが受けられます。相談前の準備が質の高い提案につながるため、面倒でも事前の整理を大切にしてください。
財産の全体像を把握する
まずは、今持っている財産をすべてリストアップします。
不動産については、固定資産税評価証明書を取得しましょう。市役所の資産税課で取得できます。不動産の種類(居住用・貸家・土地など)によって、相続税の計算方法が異なるため、これが重要になります。
ただ、相談段階であれば、固定資産税通知書の課税明細書でも大丈夫です。
預貯金については、銀行口座の残高表を集めます。複数の銀行に口座を持っている場合は、すべてのプリントアウトを用意してください。
有価証券を持っている場合、証券会社からの報告書を準備します。投資信託や株式がある場合も同じです。
事業を営んでいる人は、事業用の資産についても整理が必要です。事務所や工場などの不動産、機械装置、車両なども計算に含まれます。
負債がある場合も記録しておきます。住宅ローンやその他の借入金の残高です。これは相続時に相続税から差し引かれるため、正確な把握が必要です。
相続人と受け取り希望を整理する
相続人が誰かをはっきりさせます。法定相続人は、配偶者と子どもが基本ですが、子どもがいない場合は親や兄弟になります。
養子を持っている場合や、再婚されている場合は複雑になることもあります。不安なら、戸籍謄本を元に相続人図を作成するのもよいでしょう。
次に、誰にどの財産を受け取ってもらいたいかの希望を整理します。「長男には家を、次男には現金を」といった具体的なイメージがあると、相談がスムーズに進みます。
特定の子どもを多く支援したい理由(その子が経済的に自立していない、事業の後継者になる、など)も伝えておくと、より適切な対策が提案されます。
持参すべき書類の準備
相談当日に持参すると、相談がより具体的に進みます。
固定資産税評価証明書、銀行残高表、保険証券、契約書類(不動産売買契約書や賃貸借契約書)、戸籍謄本、その他の資産を証明する書類が主なものです。
相続人が複数の場合、その相続人たちの氏名と生年月日も記録しておくと、計算がしやすくなります。
生前贈与の主な方法と選び方
生前贈与の方法はいくつかあり、それぞれ特徴が異なります。どの方法を選ぶかで、実現できる節税効果が大きく変わってきます。
毎年110万円を贈与する暦年贈与
最も一般的な方法が、毎年110万円以内の金銭を贈与する「暦年贈与」です。
110万円以内であれば、贈与税が発生しないため、申告も不要です。毎年継続することで、20年かけて2,200万円を次世代に移すことができます。
暦年贈与は、急いでいない場合や、毎年安定して現金がある場合に適しています。
一度に大きな金額を贈与する相続時精算課税制度
相続時精算課税制度を利用すると、60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫に対して、2,500万円まで贈与税がかかりません。
ただし、相続が発生したときに、贈与した額が相続財産に加算され、そこから相続税が発生する可能性があります。
この制度のメリットは、不動産など高額資産を生前に移す際、評価額が上がるのを防げる点です。例えば、値上がりしそうな土地を生前に贈与しておくと、相続時には当時の評価額で計算されます。
相続時精算課税を選ぶと、以後その親からの贈与は暦年贈与に戻すことができません。一度選ぶと固定されるため、慎重に判断が必要です。
不動産を持っており、その値上がりが予想される場合や、相続人の経済状況に合わせて大きな資産を移したい場合に適しています。
配偶者への贈与(2,000万円の配偶者控除)の特例
婚姻期間が20年以上の夫婦の場合、一方が他方に対して、居住用不動産(または購入資金)を最大2,000万円まで非課税で贈与できる特例があります。
この特例は、生涯で1回限りです。相続税対策というより、夫婦間の経済的なサポートを想定した制度です。
高齢の妻または夫が、配偶者の住まいを確保したい場合に活用されることが多いです。
生前贈与で失敗しないための注意点
相談を受けた後の実行段階で、気をつけるべきポイントがあります。
贈与契約書は必ず作成し、公証役場で認証を受ける
贈与税の申告対象になる場合、贈与契約書の存在が重要になります。
税務署は、贈与に見える形の取引でも、実際には親から子への「援助」ではないか、という視点で調査することがあります。
贈与契約書を公証役場で確定日付を取得しておくと、「この日付けに、確実に贈与の合意があった」という証拠になります。
契約書には、贈与者と受贈者の氏名、金額、贈与日などを記載し、署名捺印します。
銀行振込で、振込記録を必ず残す
現金での授受は避け、銀行振込で記録を残すことが大切です。
通帳に「〇〇年〇月から毎年同じ金額が振込」というパターンが残ることで、暦年贈与の継続性が証明されます。
受贈者が贈与税の申告をしなくてはいけない場合、必ず申告する
基礎控除の110万円を超える贈与を受けた場合、受け取った人が贈与税の申告をする必要があります。
「申告したくない」「少額だから大丈夫」という自己判断は、後々の相続税調査で指摘を受ける可能性があります。
必ず期限までに申告することが大切です。
税理士に相談することが節税成功のカギ
生前贈与の相談先を間違えると、本来得られるはずの節税効果を逃してしまう可能性があります。
生前贈与の相談には、税理士以外にも弁護士、司法書士、ファイナンシャルプランナー(FP)など、様々な専門家がいます。しかし、相続税対策として生前贈与を活用するなら、やはり相続税の専門家である税理士が最適です。
税理士 vs 他の専門家、何が違うのか
生前贈与の相談先として考えられる専門家ごとに、その役割と特徴を理解することが大切です。
弁護士について
弁護士は遺産分割などの相続トラブルや、相続人間の権利関係を扱います。相続税がいくらかかるか、どう対策するかといった税務面は専門分野ではありません。
司法書士について
司法書士は、不動産の所有権移転登記など、法律手続き面を専門とします。生前贈与で不動産の名義変更をするときは、司法書士の専門知識が活躍する場面です。
相続税の計算や節税戦略については、相続税の専門家ではないため、その分野での判断は難しい面があります。
ファイナンシャルプランナー(FP)について
FPは、生涯にわたる資産管理や人生設計を扱います。生前贈与も含めた総合的なライフプランを提案する視点を持っています。
一方、FPは相続税の申告書を作成する資格を持たないため、税務判断については税理士の領域です。
相続税対策が目的なら税理士へ
相続税の節税効果を最大化したい場合、税理士への相談が最適です。
税理士は、複数の生前贈与方法を組み合わせて、あなたの資産状況に最も適したプランを提案できます。「暦年贈与で毎年110万円贈与しながら、同時に相続時精算課税を活用する」など、複合的な戦略も構築できます。
また、税理士は年間を通じて多くの相続税相談に対応しているため、「この業種の人は、通常このくらいの資産がある」といった業界知識も持っています。
敦賀市の税理士であれば、原子力発電所関連企業の従業員や、地域特有の事業形態についても理解が深いことが多いです。
相談時に気をつけるのは、相続税の経験が豊富な税理士を選ぶことです。すべての税理士が相続税に詳しいわけではありません。
初回相談の際に「相続税の相談件数は年間どのくらいか」「過去5年で相続税申告をした件数は」といった実績を尋ねるとよいでしょう。
税理士と他の専門家の連携が理想的
実際には、税理士が作成した相続税対策プランに基づいて、他の専門家がサポートするという連携が理想的です。
不動産の贈与が発生する場合、税理士が「この土地を長男に贈与するのが最適」と判断したら、司法書士がその登記手続きを担当します。
成年後見が必要な相続人がいる場合、弁護士に相談して法的な問題を解決します。
生前贈与後のキャッシュフロー管理について心配な場合、FPに相談して人生設計全体を見直します。
大切なのは、相続税の節税効果を第一に考えて、税理士が中心となって戦略を立てることです。そのうえで、必要に応じて他の専門家がサポートする、という役割分担が成功のカギになります。
相談当日に確認すべきポイント
相談に行く際、あらかじめ確認したい質問をまとめておくことで、相談がより実りあるものになります。
生前贈与で本当に節税になるかを確認
相談の際に必ず聞くべきは「この対策で、相続税はどの程度軽減されるか」という具体的な節税額です。
相談先から提案されたら、「贈与前と贈与後で、相続税がいくら減るのか」を数字で示してもらいます。
また、贈与にかかる贈与税と、相続時に節減される相続税を比較して、本当に得になるかを検証することが大切です。
贈与税の方が高くついてしまう対策を、うっかり実行してしまうケースもあります。
暦年贈与と相続時精算課税、どちらが適切か
複数の方法が考えられる場合、それぞれのシミュレーション結果を比較してもらいましょう。
相続人の経済状況や、資産の値上がり予想などを踏まえて、「3年後の相続ではこちら、10年後の相続ではこちら」といった選択肢が提示されるかもしれません。
相談先がきちんと説明してくれるかで、その相談先の質が見えてきます。
手続き期間と費用の詳細を確認
生前贈与実行から相続時までの手続きの流れ、それにかかる期間を把握しておくことが大切です。
また、相談料、契約書作成費、登記費用など、費用が複数に分かれている場合も多いです。
トータルでいくら必要になるのかを、事前に把握しておくとよいでしょう。後から「こんなに費用が…」となるのを避けられます。
まとめ
生前贈与は、正しく進めれば相続税対策として非常に有効な手段です。
しかし、自己判断で進めたり、不適切な方法を選んだりすると、逆に税負担が増えてしまう可能性があります。
重要なのは、相談前にしっかり準備を整え、自分たちの資産状況に合った相談先を選ぶことです。
不動産を保有している方、複数の資産がある方であれば、相続税が発生する可能性は高いでしょう。
この記事で紹介した準備チェックと相談先選びの視点を参考に、今のうちから具体的な対策を立てることをお勧めします。
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小出規峰税理士事務所
住所:福井県敦賀市 古田刈68-103-1
電話番号:0770-37-1116
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