寡婦控除とは|要件と申請手順を税理士が解説

query_builder 2026/03/23
寡婦控除とは|要件と申請手順を税理士が解説


配偶者が亡くなった場合や離婚した場合、一定の条件を満たす人は寡婦控除を受けることができます。この控除を申請することで税負担を減らすことが可能です。

しかし「自分が対象なのか」「どうやって申請するのか」という点で悩む人が多くいます。寡婦控除の対象になるかどうかは、以下の3点で判断できます。

・配偶者と死別または離婚している

・年末時点で独身である

・所得が500万円以下である

この3つに当てはまる方は、控除の対象となる可能性があります。

本記事では、寡婦控除の基本知識から申請手順までを詳しく解説します。

寡婦控除とは何か

寡婦控除は、配偶者が亡くなったり、離婚したりした方が一定の要件を満たす場合に受けられる税制上の優遇措置です。控除額は27万円で、これにより所得税と住民税が軽くなります。

寡婦控除は、夫が亡くなった後や離婚後に、一人で生活を支えている方の経済的負担を減らすための制度です。毎年の確定申告や年末調整の際に、この控除を申請することで、所得から27万円を差し引くことができます。

この27万円の控除によって、支払う所得税がどの程度減るかは、その人の所得によって異なります。所得税の税率が10%なら2万7000円の減税、20%なら5万4000円の減税になるという具合です。

さらに、住民税でも一定の控除が受けられることが多いため、全体的な税負担の軽減効果は大きいといえます。

ただし、注意が必要な点があります。この制度は昔から存在していますが、制度の名前や要件がやや複雑で、多くの人が知らずに申請せずにいることもあります。

自分が対象なのかどうか、事前に確認することが重要です。

寡婦とひとり親控除の違い

税制上、「寡婦」と「ひとり親控除」という2つのカテゴリーが存在します。この2つは似ていますが、対象となる人の条件が異なり、控除額も異なります。

ひとり親控除とは、配偶者が亡くなった方で、かつ親子関係にある子どもがいる場合をいいます。この場合の控除額は35万円となり、通常の寡婦控除(27万円)よりも手厚い控除が受けられます。

一方、通常の寡婦とは、夫が亡くなったものの子どもがいない場合、または離婚後で一定の要件を満たす場合をいいます。

制度の背景には、配偶者を失い、子どもを育てながら一人で生計を立てている方への経済的支援という考え方があります。子どもがいる場合は、教育費などの負担も大きいため、より手厚い控除が設けられています。

寡婦控除の対象となる4つの要件

寡婦控除を受けるためには、複数の要件を満たす必要があります。これらの要件を一つずつ確認することが、申請のための第一歩となります。

要件1:配偶者が亡くなっている、または離婚している

寡婦控除の最も基本的な要件が、配偶者が亡くなっているか、離婚をしているかのいずれかに該当することです。配偶者が生存している場合は、この控除を受けることができません。

「配偶者が亡くなっている」とは、夫がすでに死亡した状態をいいます。一方、「離婚している」とは、法律上の離婚が成立している状態です。別居中であっても、法律上の離婚が成立していない場合は対象になりません。

また、配偶者が行方不明で、まだ法律上の離婚手続きを進めている段階であれば、失踪宣告を受けることで配偶者が亡くなったのと同じ扱いになります。

このように、法的な地位の変化が重要になります。

要件2:その年の年末時点で独身である

寡婦控除を受ける年の12月31日時点で、独身状態でなければなりません。つまり、夫が亡くなった後に再婚をした場合や、離婚後に再婚をした場合は、その年からこの控除を受けることができなくなります。

再婚をした場合は、翌年からは配偶者控除や配偶者特別控除など、別の控除制度の対象になる可能性があります。一つの控除制度から別の制度へ切り替わるという形になるため、税負担そのものは必ずしも大きく増えるわけではないこともあります。

「その年の年末時点」というのは、1月1日から12月31日までの間に再婚した場合、その年の分については寡婦控除を受けることができず、翌年から新しい控除制度が適用されるということです。

要件3:扶養親族がいるか、一定の所得基準を満たしている

寡婦控除の対象になるには、親子関係にある扶養親族がいるか、または一定の所得基準を満たしている必要があります。この要件は、やや複雑なので注意が必要です。

具体的には、配偶者が亡くなった方で親子関係にある扶養親族がいる場合は、所得制限なくひとり親控除として控除を受けられます。一方、親子関係にある扶養親族がいない場合は、本人の合計所得金額が500万円以下であることが条件になります。

また、離婚後の場合は、扶養親族の有無にかかわらず、本人の合計所得金額が500万円以下であることが条件です。この所得の計算には、給与所得だけでなく、事業所得や不動産所得なども含まれます。

要件4:生計を一にしている扶養親族がいる場合の留意点

寡婦控除の適用を受けるには、扶養親族との関係が「生計を一にしている」ことが必要です。

「生計を一にしている」とは、同じ屋根の下で暮らしていて、生活費や生活必需品をまとめて購入・使用している状態をいいます。単に家族関係があるだけでなく、経済的に密接に関連していることが重要です。

例えば、成人した子どもが遠く離れた場所で独立して生活している場合は、たとえ親子関係があっても「生計を一にしている」とはいえないため、その子どもを扶養親族として計上することはできません。

一方、親が単身赴任で別の場所に住んでいても、定期的に生活費を送金し、大きな買い物は相談して決めるなど、経済的に一体性がある場合は「生計を一にしている」と判断されます。

年間所得と所得制限について

寡婦控除の適用を受けるには、本人の所得が500万円以下であることが重要な条件になる場合があります。ここでは、所得の計算方法と制限について詳しく説明します。

合計所得金額の計算方法

税制上の「所得」と日常会話での「収入」は異なります。所得控除を差し引いた後の金額が「所得」です。寡婦控除の適用判定では、給与所得、事業所得、不動産所得など、すべての所得を合計した「合計所得金額」が500万円以下であることが条件になります。

給与所得がある場合、その給与収入から給与所得控除という一定額を差し引いた金額が「給与所得」になります。例えば、給与収入が400万円でも、給与所得控除を差し引くと300万円程度になることもあります。

自営業者の場合は、事業の売上から経費を差し引いた「事業所得」を計算します。不動産を貸し出している場合は、不動産収入から必要経費を差し引いた「不動産所得」を計算します。これらすべてを合計した額が500万円以下であれば、所得制限をクリアしていることになります。

所得の種類

計算方法

給与所得

給与収入 - 給与所得控除

事業所得

売上高 - 必要経費

不動産所得

賃料収入 - 管理費・修繕費など

配当所得

配当金 - 配当控除前の金額で計算

上の表は、主な所得の種類と計算方法をまとめたものです。寡婦控除の適用要件を判定するときは、これらの所得をすべて合計した「合計所得金額」を確認する必要があります。

500万円の所得制限を超えた場合

本人の合計所得金額が500万円を超えた場合は、寡婦控除を受けることができません。この場合、扶養親族がいたとしても控除は適用されません。

所得が500万円を超えるということは、一定程度の経済的余裕があると判断されるため、税制上の優遇措置が必要ないと考えられているわけです。

ただし、500万円に満たない場合でも、ギリギリの境界線にある場合は、その後の医療費控除や寄付金控除など、他の控除との組み合わせによって全体的な税負担を減らせる可能性があります。

寡婦控除の申請手順

寡婦控除を実際に申請するには、どのような手続きが必要なのでしょうか。給与所得者と自営業者では、申請方法が異なります。ここでは、それぞれのケースについて詳しく説明します。

給与所得者の場合:年末調整での申請

給与所得者の場合、寡婦控除の申請は通常、年末調整で行います。年末調整とは、毎月の給与から天引きされた所得税の年間合計を、12月にまとめて調整する手続きです。

具体的な手順は以下の通りです。

  1. 申告書の受け取り 勤務先から「給与所得者の扶養控除申告書」という書類が配られます。

  2. 必要事項の記入 この書類に寡婦であることと、扶養親族の情報を記入します。配偶者が亡くなった場合は、死亡時期や扶養親族の氏名・生年月日などを正確に記入することが大切です。

  3. 証明書の添付 記入した申告書に、必要に応じて証明書を添付します。配偶者の死亡を証明する戸籍謄本や、扶養親族の扶養控除申告書などが該当します。

  4. 申告書の提出 これらを勤務先の給与部門や人事部に提出すると、年末調整で寡婦控除が自動的に適用されます。

  5. 控除の反映 年末調整が完了すると、12月の給与支払い時点で控除が反映され、所得税が軽くなります。

ほとんどの給与所得者にとっては、年末調整で完結するため、自分で税務署に申告する必要はありません。

自営業者の場合:確定申告での申請

自営業者や事業所得がある人の場合、寡婦控除の申請は確定申告で行います。確定申告とは、毎年2月中旬から3月中旬に、その年の所得と税額を自分で計算して税務署に申告する手続きです。

確定申告書の第一表という主要な申告用紙に、寡婦控除の対象者であることを記載する欄があります。ここに自分の状況(配偶者が亡くなっている、または離婚している)を記入します。さらに、扶養親族がいる場合は、その氏名や関係、生年月日などを記入します。

また、確定申告書と一緒に「扶養控除申告書」というシートを提出することが多いです。ここで扶養親族の詳細情報を記入し、その親族が生計を一にしていることを明確にします。

確定申告は、毎年3月15日が申告期限になっています。期限までに申告を済ませることで、寡婦控除の適用を受けられます。手書きの申告書を税務署に持参する方法と、e-Taxという電子申告システムを使う方法の2つがあります。

e-Taxを使った電子申告

近年、確定申告はe-Taxという電子システムで行うことが一般的になってきました。e-Taxを使うと、自宅やオフィスから申告書を作成・送信できるため、税務署に出向く手間が省けます。

e-Taxで申告する場合、国税庁のホームページから確定申告書等作成コーナーにアクセスします。ここで質問に答えていくと、自動的に確定申告書が完成します。寡婦控除の適用を受ける場合は、画面上で該当する項目を選択し、扶養親族の情報を入力していきます。

申告書が完成したら、マイナンバーカードを使ったマイナンバーカード方式、または税理士による代理申告など、本人確認の方法を選びます。その後、申告書をe-Taxで送信すると、申告が完了します。

e-Taxのメリットは、申告が受け付けられると、すぐに確認メールが届くことです。紙での申告の場合、税務署で処理されるまで時間がかかることもありますが、電子申告なら即座に確認できます。

書面申告での手続き

e-Taxを使わず、紙の申告書を直接税務署に提出する方法もあります。この場合、確定申告書第一表と、寡婦控除に必要な情報を記入した扶養控除申告書シートを作成します。

申告書と一緒に、配偶者の死亡証明書(戸籍謄本)や、扶養親族との生計を一にしていることを示す書類があれば、それを添付します。例えば、親族と同じ住所に住んでいることを示す住民票や、親族が自分の所得申告で扶養親族として記載されていないことを示す書類なども添付すると、審査がスムーズになります。

申告書一式を、居住地の税務署に持参するか、郵送で送付します。持参する場合は、確定申告期間中に税務署に出向きます。この期間は非常に混雑するため、早めに出向くことをお勧めします。

寡婦控除を申請する際の注意点

寡婦控除を申請するときには、いくつか気をつけるべき点があります。これらを理解していると、申請がスムーズに進み、トラブルも避けられます。

死別と離別では要件が異なる

配偶者が亡くなった場合と、離婚した場合では、寡婦控除の要件が微妙に異なります。これを混同してしまうと、申請漏れや不正申告につながるため、注意が必要です。

配偶者が亡くなった場合は、その翌年から、扶養親族の有無にかかわらず寡婦控除を受けられます。ただし、再婚した場合は、その年から控除を受けられなくなります。

一方、離婚した場合は、本人の所得が500万円以下であることが条件になります。さらに、扶養親族がいない場合でも、所得さえ500万円以下であれば寡婦控除を受けられます。

つまり、離婚後で独身、かつ低い所得の方は、子どもがいなくても控除の対象になるということです。

扶養親族の所得にも上限がある

自分が寡婦控除の要件を満たしていても、扶養親族として計上している人の所得が高い場合は、その親族を扶養親族として認められなくなります。

扶養親族の要件としては、年間の合計所得金額が58万円以下であることが必要です。給与所得者の場合、給与収入が123万円以下であれば、給与所得控除により所得が58万円以下になるため、扶養親族の条件を満たします。

成人した子どもが働いていて、その年間収入が123万円を超えた場合は、もはや扶養親族として計上できません。その場合、親側も扶養親族がいない状態になるため、寡婦控除の要件(特に配偶者が亡くなったケース)を確認し直す必要があります。

再婚の時期に注意する

配偶者が亡くなった後に再婚を考えている場合は、再婚時期に注意が必要です。その年の12月31日時点で再婚しているかどうかが判定時点になります。

例えば、配偶者が2月に亡くなり、12月に再婚した場合、その年の確定申告では、年末の12月31日時点で既に再婚しているため、寡婦控除を受けることができません。一方、配偶者が2月に亡くなり、翌年の1月に再婚した場合は、亡くなった年の12月31日時点では独身状態だったため、その年は寡婦控除を受けられます。

複数の控除との重複適用はできない

寡婦控除と配偶者控除(または配偶者特別控除)は、同時に受けることはできません。また、ひとり親控除としての控除と、通常の寡婦控除を同時に受けることもできません。どちらか一方を選んで申請する必要があります。

通常は、控除額の大きい方を選びます。ひとり親控除の場合は35万円の控除が受けられ、通常の寡婦の場合は27万円の控除が受けられるため、子どもがいる場合はひとり親控除として申請することが有利です。

寡婦控除の申請についてよくある質問と回答

寡婦控除を申請する際に、多くの人が抱く疑問をまとめました。これらの質問と回答を確認することで、実務的な不安が解消され、スムーズな申請につながります。

配偶者が亡くなった年に寡婦控除は受けられるか

はい、受けられます。配偶者が亡くなった年の12月31日時点で独身状態(再婚していない)であれば、その年から寡婦控除を受けられます。亡くなった時期は関係なく、1月に亡くなったほか、12月に亡くなった場合でも適用されます。

離婚の調停中の場合は対象になるか

いいえ、法律上の離婚が成立していない状態では、寡婦控除の対象にはなりません。離婚調停の最中であっても、別居中であっても、正式な離婚届が受理されていなければ控除は受けられません。法的な離婚の成立が必須条件です。

子どもが大学進学で家を出た場合は扶養親族から外れるか

いいえ、子どもが大学進学で親元を離れても、生計を一にしている限り扶養親族として計上できます。大学の学費を親が負担していたり、生活費を仕送りしている場合は、経済的に生計が一体であるとみなされるため、扶養親族の要件を満たします。

虚偽の申告をした場合のペナルティは

寡婦控除の申告で虚偽をした場合(例えば、再婚しているのに隠して申告する)は、加算税や延滞税のペナルティが課せられます。最悪の場合は、脱税罪に問われることもあります。正確な申告が重要です。

ただし、自分の状況がはっきりしない場合や、適用要件がよくわからない場合は、無理に自分で判断せず、税理士に相談することをお勧めします。

例えば、別居中の配偶者がいる場合や、再婚のタイミングが微妙な場合、複雑な家族構成がある場合など、判定が難しいケースは多くあります。税理士に相談することで、正確な判定が可能になり、後々のトラブルや追加納税を防ぐことができます。

まとめ:寡婦控除で税負担を減らしましょう

寡婦控除は、配偶者を失った方や、離婚後に一人で生活を支えている方を経済的に支援するための制度です。この制度を知らずに申請せずにいると、本来受けられるはずの控除を見落としてしまうことになります。

寡婦控除の要件は、配偶者が亡くなっているまたは離婚している、年末時点で独身である、扶養親族がいるか所得が500万円以下である、などです。これらの要件に当てはまるか確認し、当てはまる場合は、給与所得者なら年末調整で、自営業者なら確定申告で申請することが大切です。

27万円から35万円の控除によって、所得税と住民税の両方が軽くなります。毎月の給与の手取り額が増えたり、税金の還付を受けたりすることで、実際の生活がより楽になる可能性があります。

制度の内容や申請方法がわかりにくい場合は、税理士に相談することをお勧めします。特に、複数の所得がある場合や、扶養親族の要件が複雑な場合には、専門家のアドバイスが役に立ちます。

寡婦控除の申告で悩んだら、福井県敦賀市の小出税理士事務所へ

寡婦控除をはじめとする税制上の優遇措置は、適切に申請することで大きな効果をもたらします。しかし、自分が本当に対象者なのか、どのような申請方法が最適なのか、複雑になることもあります。

小出税理士事務所では、金沢国税局での長年の実務経験を活かし、寡婦控除の適用判定から申告方法まで、お客様に合わせた最適なアドバイスをいたします。「死別なのか離別なのかで要件が変わる」「扶養親族の判定が難しい」「再婚のタイミングによって控除が変わる」といった複雑なケースも、わかりやすくご説明いたします。

「自分が寡婦控除の対象か知りたい」「複雑な家族構成で不安」「死別や離別の時期が判定に影響するのか」といったご要望をお持ちの方は、ぜひご相談ください。初回相談は無料です。誤った申告を防ぎ、本来受けられるはずの控除をしっかり活かすことができます。



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小出規峰税理士事務所

住所:福井県敦賀市 古田刈68-103-1

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